新築マンション価格の高騰が中古市場に波及してきました。不動産情報会社マーキュリーがまとめた2024年7〜9月期の東京23区の築20年以内の中古物件平均価格は(@523万円)1億1077万円です。マンション価格は新築がピークと言われたのも今は昔です。投資マネーや再開発で人気エリアの物件価格は上昇しています。 日経MJは(不動産シンクタンク)マーキュリーの協力を得て、首都圏で2023年11月〜2024年10月の間に取引されたファミリーマンョンの中古物件の平均価格や竣工時からの上昇幅を分析しました。 マーキュリーのデータに基づくと、23区の中古物件平均価格は過去1年で約3割上昇し、ついに1億円に到達しました。不動産経済研究所(東京・新宿)によると2023年の23区の新築マンション平均価格は(@542万円)1億1483万円。新築に続き中古でも販売価格「1億円時代」が訪れたようです。 上昇幅で首位だったのは、東京メトロ南北線六本木一丁目駅にほど近い「アークヒルズ仙石山レジデンス」です。(平成24年)2012年の分譲時の平均価格が1億6526万円の高級マンションとして話題になった同物件だが、足元の中古平均価格は9億8951万円と、5.99倍になっています。マーキュリーの片平勝也事業戦略室長は「都心部は買いたい人がいればどんな値段でも買うという市場になっており、上昇幅も飛び抜けている」と分析します。 東京都港区に集中、中央区と大差 都心部でも特に目立つのが港区です。上位100物件中、港区に立地する物件は42物件と、2位の中央区(14物件)に大差を付けた。一体、誰が買っているのか――。 「大半が経営者」です。野村不動産ソリューションズが運営する、都心エリアの高級物件に特化した仲介「レアリア東京」の谷川彰史部長は港区で物件を購入する顧客像についてこう語ります。アベノミクス以降、株価の上昇などを受けて資産が増加した富裕層が「現金を不動産に変えた方が良い」という発想で購入することが増えたといいます。 こうした資金が流入して不動産価格が高騰する中、「値上がりするなら買っておこうかと現金で購入する例が多い」(谷川氏)というニーズを呼び込んでいます。地方在住の50代会社経営者、松下さん(仮名)は「娘が都内の大学に通うこととなり、相続対策も兼ねて一部屋購入した」と言います。 レアリアは2億円以上の高級物件を仲介するが、過去1〜2年で価格上昇は加速しています。2023年4月〜2024年7月の平均成約価格は約3億7000万円に達しました。谷川氏は「麻布台ヒルズや三田ガーデンヒルズなど高価格帯の新築マンションが供給されたことで、それが基準となって中古価格がけん引された」と分析します。 港区でも上昇幅に濃淡はあります。谷川氏によると「麻布や六本木、赤坂など富裕層が好むエリアがあり、東京タワーが見える眺望の良い部屋が選ばれるます。これを裏付けるように価格上昇率上位の物件が立地するのは麻布十番や赤坂、広尾駅周辺などに集中しています。港区以外でも、千代田区の「皇居ビュー」や渋谷区の「渋谷駅徒歩圏内」など、都心部の高額物件には特定の条件と取引価格が結びつくことが多いです。 近年、買い手として存在感を増すのが外国人投資家です。地政学的なリスクを背景に日本の物件を購入する台湾や香港などの富裕層が増え、こうした需要は都心の物件に集中しています。人気が高いから価格が上昇し、価格が上昇することでさらに人気が高くなるサイクルが都心相場を下支えしています。ランキングについて 不動産情報会社マーキュリーが保有する、首都圏で2023年11月〜2024年10月の間に取引された物件データのうち、(平成7年)1995年以降に分譲されたファミリータイプのマンション(住戸面積50平方メートル以上)の中古物件の平均価格や竣工時と比較した場合の上昇幅を算出し、ランキングとしました。 湾岸エリアのタワマン、人気急上昇 都心部のほかに上昇が目立ったのが、タワーマンションが林立する湾岸エリアです。(平成18年)2006年に分譲された「豊洲シエルタワー」(東京・江東)は4.62倍、(平成20年)2008年分譲の「アーバンドックパークシティ豊洲」(同)は3.17倍、(平成17年)2005年分譲の「Wコンフォートタワーズ」(同)2.56倍など、2000年代に分譲されたタワマンが高い上昇幅を記録し、販売価格が1億円を超える「億ション」は当たり前になりました。 不動産仲介会社FJリアルティ(東京・中央)の藤田祥吾社長はこれらの物件が分譲された時代の湾岸エリアについて、「今ほどの人気がなく、1億円なんてありえない感じだった」と振り返ります。都心に近い立地や眺望などが高く評価されている現在からすると隔世の感があるが、当時は荒涼とした埋め立て地としてのイメージが根強く、不動産デベロッパー側も割安感を前面に出して販売していた歴史があります。(平成23年)2011年の東日本大震災直後には販売に苦戦するケースもありました。 しかし、(平成25年)2013年に東京五輪の開催が決定すると、景色は一変しました。藤田氏は「バス便や五輪関係の施設などのインフラが一気に整い、それに伴って商業施設も誕生し、さらに住みやすくなった」と話します。この頃から、共働きで世帯年収が2000万円を超えるような「パワーカップル」や富裕層も買い手として参入するようになり、値段は上昇の一途をたどりました。 そして起爆剤となったのが「晴海フラッグ」(東京・中央)です。東京五輪・パラリンピック選手村跡地に建設された同物件は周辺相場よりも大幅に割安に設定されたこともあり、倍率百倍以上の争奪戦となりました。晴海フラッグが話題になるたびに湾岸エリアに注目が集まり、人気が上昇しました。また、抽選に外れた人が周辺の物件を購入することでエリア全体の相場が押し上げられました。 相場の上昇により、購入時よりも市場価格が大幅に高くなったことで巨額の「含み益」を抱えた住民も多いです。アーバンドックパークシティ豊洲に10年以上住む40代前半の男性、田畑さん(仮名)は「子供が小さい頃、アーバンドックららぽーと豊洲に近いからという理由で買った部屋だったが、購入時よりも数千万円値上がりしている」と顔をほころばせます。流動性が高く、投資商品としての側面を持つことも、湾岸エリアのタワマンが人気の理由です。 こうした状況下、湾岸エリア内の引っ越しも活発です。「自宅が高く売却できるということで、より広い部屋を求めて湾岸エリア内で引っ越しする人が多い」(藤田氏)といいます。こうしたニーズもあり、ここ数年は単身者用の狭い部屋よりも3LDKの広い部屋ほど坪単価が高くなる傾向があるといいます。 都内で湾岸と近い値動きをしたのが豊島区です。分譲から17年で2.79倍に値上がりした「エアライズタワー」や19年で2.63倍になった「ブリリアガーデン池袋」のように、大規模タワマンの開発で都心部から距離や利便性といったエリアが本来持っていた魅力が見いだされ、所得が高いファミリー層に選ばれるようになりました。マーキュリーの片平氏は「再開発で街が育ち、安かったエリアが高くなっていくというケースは多い」と話します。 工場跡地が一転人気エリアに 再開発でエリアの人気が上昇する現象は都内に限った話ではない。郊外で新たに誕生した人気エリアの象徴が、JR川崎駅西口です。かつて東芝や明治製菓(当時)の工場があった駅前一帯は再開発により一変、駅直結の大型ショッピングモール「ラゾーナ川崎プラザ」は多くの人々でにぎわいます。 ラゾーナ川崎の一画に建てられたタワマン「ラゾーナ川崎レジデンス」(川崎市)は(平成19年)2007年の分譲時に4449万円だったが、現在は2.95倍となる1億3127万円で販売されています。高額での成約が相次いでいることから、強気の売り出しも増えていることが背景にあります。 「ラゾーナができる前は夜になると暗い雰囲気だったが、今はわざわざ遠くから見に来て『ここがいい』という人も増えた」。「三井のリハウス」川崎センターで所長を務める、三井不動産リアルティの塩入慶太氏はこう語ります。川崎駅西口では、ラゾーナを中心に周辺で再開発が相次ぎ、それに合わせて歩行者デッキなどの整備も進展。相乗効果でさらに価格が上昇するという現象が起きていると言います。 かつては子育て世帯から選ばれる街とは言い難かった川崎駅西口だが、横浜や都内に出やすいという交通利便性の高さも見直され、いまでは私立小学校に通わせるような高所得者が住むことも多いといいます。 神奈川県内では横浜駅前の再開発に伴って(平成19年)2007年に竣工した「ナビューレ横浜タワーレジデンス」(横浜市)も3.23倍の1億8313万円、「パークタワー横浜ステーションプレミア」も2.77倍と大幅に上昇しています。 川崎や横浜で価格が上昇している物件に共通しているのが、分譲時期が2000年代で、駅からの距離が近いという点です。工場跡地をはじめマンション用地が豊富だった時代で、現在では開発が難しいエリアも多いです。居住スペースが広く、駐車場など付帯設備も充実していることも、築年数が浅いマンションにはないメリットだ。 横浜駅近隣では、東高島駅北区の三井不動産レジデンシャルのトリプルタワーマンション計画です
京浜東北線と横浜線の東神奈川駅から約400メートル(徒歩5分)、京急線の京急東神奈川駅から約300メートル(徒歩4分)横浜駅から約1.3キロのコットンハーバーマンションの首都高速寄りに立地します
この周辺は、開発が遅れておりましたので、完成すればみなとみらいや馬車道の北仲並みの価格帯に高騰してくると予測されます。総戸数として2200戸予定しています。公開空地、道路の整備もされるために現在の姿から想像できないくらい美しい街並みになることでしょう。
足元では過熱感一段落
過去10年以上にわたり上昇が続いてきた首都圏の中古マンション相場ですが、足元では過熱感も一段落しつつあります。今回の取材でも「価格上昇ペースが落ち着いてきた」「売り主が売り急がなくなった」といった声をよく耳にしました。実需が多いエリアでは金利上昇を警戒する購入検討者も多いといいます。SNSや不動産売買サイトを通じてエリアや物件の相場観が広く知られるようになり、購入者側にとってマンションは「一生に一度の買い物」という意識は薄れています。特に人気物件は投資商品としての側面も持ち、景気や金利、株や為替相場といった外部要因も無視できなくなりつつあります。(記者外山尚之)
とはいえ、2025年は今後大きく為替が円高130円以下にならない限りたとえ利上げがあったとしても、引き続き海外勢が分譲マンション価格を下支えするので
2025年の新築マンション価格はさらに高騰する可能性があります。その影響で都心の中古マンションも上昇すると予測されます。
(東高島駅北区 トリプルタワーマンション計画地 荒涼とした埋立地)
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