大手銀行5行は9月30日、変動型の住宅
ローンの基準金利を引き上げると発表しました。既存の顧客は支払う返済総額が増える一方、新規で借り入れる住宅購入者に適用する最優遇金利は、三菱UFJ銀行が据え置くなど戦略の違いも出ています。一部のネット銀行も顧客獲得へ低金利を続けており、競争はなお激しいです。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、りそな銀行の大手5行は日銀の追加利上げに伴い短期プライムレート(短プラ)を9月に0.15%上げました。
住宅ローンの基準金利は短プラに連動して設定しており、10月から0.15%高い2.625%にしました。基準金利の引き上げは(2007年以来の)17年ぶりとなります。
ただ、新規で借り入れる人に適用する「優遇金利」では各行で戦略がわかれました。
三菱UFJ銀は基準金利が上がる分を優遇幅で抑える形で、最優遇金利を0.345%に据え置きました。最優遇金利は各行の住宅ローン商品の看板となるもので、競争力のある金利を提供し、新規顧客の獲得につなげる狙いがあります。
既存契約の基準金利を引き上げたみずほは、新規で借り入れる顧客の基準金利を2025年に見直すため10月の最優遇の金利を変えませんでした。
一方で三井住友、三井住友信託、りそなの3行は最優遇金利も基準金利と同じように0.15%引き上げます。ある幹部は「金利は上げるが団体信用生命保険を手厚くするなどして住宅ローンの価値を高めていく」と話します。
住宅ローンへの依存度が高いネット銀行も金利を抑えて新規顧客を減らすのを回避しようとしています。
最優遇金利を0.42%にしているSBI新生銀行は住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」経由での申し込みを対象に業界最低水準となる金利を提示する取り組みを始めます。SBI新生銀は「他行との差別化を図る」として金利上昇の機を捉えて契約増を狙っています。
auじぶん銀行は基準金利を0.25%上げるが、最優遇金利は上昇幅を0.15%に抑えて0.479%にします。
消費者の間では低い金利のローンを探る動きが活発になっています。「モゲチェック」を運営するMFSによると、9月の借り換えなどの相談は8月に比べて2.3倍に増えています。
「いい条件の銀行を探している」。メガバンクで35年の住宅ローンを変動金利で借りている東京都新宿区の女性会社員(34)は、借り換えを検討している一人です。
これまでは「手数料がかかる繰り上げ返済はしたことがない。金利の低いネット銀行を候補として考えている」といい、今後の金利上昇をにらんで各銀行のウェブサイトを確認しています。
既に借り入れている既存顧客は、一定期間が経過した後の2025年1月などの返済分から改定後の金利になります。ただ大手行などは金利が変動した場合でも返済額が5年間変わらない「5年ルール」を適用しています。このため毎月の負担額の増加は限定的とみられます。
月々の返済額が変わらなくても、返済額のうち利息分が増えて元金の減少ペースは落ちます。このため繰り上げ返済や、より低金利の銀行への借り換えなどをしなければ、完済までに支払う総額は増える可能性が高いです。
MFSによると、基準金利が0.15%上がることで、元本3500万円を35年ローンで新規で借り入れる場合、毎月の返済額は2300円程度増える。
日銀の統計によると、国内銀行の住宅ローンの新規実行額は4~6月期に4兆1527億円と前年同期に比べ16.6%増えています。6月末の融資残高も148兆円と増加が続きます。建築資材の高騰で物件価格も上昇していることが一因とみられます。
住宅ローン金利は変動型と、長期金利に連動する固定型に分かれます。直近では住宅購入者の8割近くが変動型を選ぶとされています。今回、変動型が上がっても固定型との金利差はなお大きい。
単純に変動金利は、まだまだ0.5%切るぐらいで、フラット35固定金利が1.8%台なのでこれだけ離れていれば変動を選ぶようになります
変動型の人気は当面続くとみられるが、日銀が今後も追加利上げを続けていけば、変動型で借りている契約者の負担感はさらに増すことになります。ただ、各銀行がいろんな戦略で、顧客獲得へ競争していますのでまだまだ低金利の恩恵は受けれます。