住宅ローン、繰り上げ返済の損得(日経新聞記事より)
2025-03-16
住宅ローンの金利が上昇しています。日銀が政策金利の引き上げを実施しました。借入中に金利が変わる変動型で住宅ローンを借りている場合、適用金利が上昇し、利払いが膨らみ始めています。足元では追加利上げの観測もあり、当面は利上げ局面が続きそうです。家計の負担を抑えるには「繰り上げ返済」の活用も有効だが、注意点を押さえておきたいです。 「当初はこれほど早く金利が上がるとは思わなかったです。安い金利で当面元金が減ると考えていた」。2019年末に千葉県内で注文住宅を購入した男性(31)がぼやきました。2019年に総額6000万円弱の住宅ローンを年0.4%台後半の変動金利で借り入れしました。毎月返済額は当初約15万円。ところがその後、日銀の金融政策の変更に伴い、ローン金利は上昇しました。2024年秋に毎月返済額は約5000円増えました。 「今の金利が完済まで続くなら、借り入れ当初の見込みより返済総額は200万円以上増える」と男性は話します。返済負担を減らすため「手元の資金を取り崩し、繰り上げ返済した方がいいかもしれない」と検討中です。 2024年以降、日銀は政策金利を引き上げ始めました。2024年初めにマイナス圏だった政策金利は、3度の政策変更を経て、2025年3月時点で0.5%に上がった。年内の追加利上げ観測も多いです。 変動型の金利は、政策金利の動きに連動しやすいです。多くの金融機関は半年ごとに金利を見直す仕組みです。既に借入中の人は、適用金利が2024年中に上がり、2025年は夏ごろに再び上昇するケースが多いです。 金利上昇時の対応策の一つが、「繰り上げ返済」です。毎月の返済額とは別に、元金の一部を前倒しで返す方法。返済はすべて元金の支払いのみに充てられるため、その分、将来支払う予定だった利息を減らすことができます。 繰り上げ返済には積極的な兆候もあります。auじぶん銀行では、2025年1~2月の繰り上げ返済の金額が前年同期比で約1.6倍に増えた。1件あたりの金額が8万円ほど増えたという。 繰り上げ返済は主に「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがあります。期間短縮型は毎月返済額は変えず、残りの返済期間を短くします。一定期間に返済予定だった元金をまとめて返済するかたちです。一方、返済額軽減型は、残りの返済期間は変えず、毎月返済額を軽減します。繰り上げ返済分は、返済期間全体にならすかたちになるります。 繰り上げ返済の効果を試算してみましょう。総務省の調査によると住宅を初めて購入する人が多い30代の世帯の預貯金は平均約825万円。この半分の400万円を繰り上げ返済に充てると想定。4500万円を35年返済で借り、当初、金利年0.4%の場合で考える。 まず、繰り上げ返済により減少する利息額はどのくらいか。金融経済教育推進機構(J―FLEC)の「知るぽると」のシミュレーターで計算します。例えば、残りの返済期間が約30年、適用金利が1%上昇して年1.4%になったときに繰り上げ返済すると、期間短縮型なら、返済期間が約4年短くなります。金利がその後一定なら、繰り上げ返済しない場合に比べ、約190万円の利息が減る。返済額軽減型なら、残り30年の合計の利息減少額は約90万円になる。 どちらの方法でも100万円規模の利息が減ります。支払総額でみれば、繰り上げ返済による効果は大きいといえそうです。特に期間短縮型の減少額は大きいです。住宅ローンアドバイザーの淡河範明氏は、ローンの完済時期が年金暮らしとなる定年退職後となる場合などは「期間短縮型による完済前倒しは、収入低下に備えた安心感につながる」と話します。○ ○ 一方で、毎月返済額はどうか。金利上昇時、目先の負担を抑えるなら返済額軽減型が選択肢になります。住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営するMFSの塩沢崇取締役の試算で、繰り上げ返済の効果を見てみましょう。例えば、返済が残り30年の時に適用金利が年0.9%(0.5%上昇)になると、毎月返済額は2〜3万円に増える。この時点で400万円繰り上げ返済すると、毎月返済額は11.1万円になり、当初の11.5万円と比べても、約0.4万円毎月の支出を減らせる。 ただし、金利の上昇幅によっては、繰り上げ返済しても毎月返済額は金利上昇前の水準には戻らない。返済期間残り30年をみると、適用金利が年1.15%を超えると、毎月返済額は当初の金額より増えます。例えば適用金利が1.4%の場合、繰り上げ返済後の毎月返済額は、金利上昇前の当初に比べ、0.4万円の増加になります。残りの返済期間が長い時に金利の上昇幅が大きくなると、繰り上げ返済しても毎月返済額は増えやすいです。 こうした場合、繰り上げ返済をすると、毎月返済額がかえって増えてしまうことがあるので注意が必要だ。変動型では、毎月返済額の見直しを原則5年ごととする「5年ルール」がある場合が多いです。適用金利が上昇しても、毎月返済額は次の見直し時期までは変わらず、利息に充てる金額が増えます。 ただし繰り上げ返済すると、その時点のローン残高、金利と残りの期間で再計算します。返済額軽減型はルールにかかわらず、毎月返済額が変わることが多いです。繰り上げ返済により、毎月返済額の上昇時期を早めてしまうことになります。 残りの返済期間が長い場合、繰り上げ返済は必ずしもプラスになるとは限らないです。淡河氏は「毎月のキャッシュフローの悪化につながる懸念がある」と指摘します。ローン控除・保障減少に注意 住宅ローンは借り続ける利点もあります。ひとつは住宅ローン控除です。最大13年間、年末のローン残高の一定割合を所得税などから引けます。対象期間中なら、繰り上げ返済でローン残高を減らすと控除額も減ります。利息の減少分より控除の減少分が大きければ、家計の負担増につながります。団体信用生命保険の効果も考慮したいです。契約者の死亡時などにローン残高を保障するため、残高が減ると保障額も減ります。 住宅ローンの金利は教育ローンなどに比べて低い。「将来、教育費やリフォーム資金などを新たな借り入れでまかなうことになるなら、今ある余裕資金は繰り上げ返済に充てず、温存しておくべきだ」(MFSの塩沢氏)。政策金利の引き上げで預金利率が上昇しているほか、賃金のベースアップも増えてきました。毎月返済額の増加分を収入増で補えれば、繰り上げ返済の必要はない場合も多いです。 金利上昇時には、別の金融機関で新たに住宅ローンを組み直し、返済中のローンを一括返済する「借り換え」も選択肢です。政策金利が上昇しても、借り換え向けには低金利を維持する金融機関は多いです。借り換えは新たな借入額に対して2.2%など、手数料がかかります。手数料を計算に含めると「借り換え前後の金利差が0.3%程度がおおむねの損益分岐点になります」(塩沢氏)といいます
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